寺院境内の山門手前の玄関門扉を錆びない軽い形に取り替え

巨大な岩石が3つ、山の頂きに寄り添う様に聳えているから名付けられた三石山は、千葉県君津市の山合いにあります。

室町時代に開山された観音寺には沢山の参拝者さんが訪れます。

大型の門扉を取り替えたい

寺の境内は一本の山道を登って行き、入り口は山門(薬医門)があります。

山門の手前には境内管理用の門扉が設けられていて、朝は9時に開けられて、夕刻は16時前に閉められます。

既存の門扉は鉄で作られていて、幅4メートルの片開き扉です。設けられてから時間の経過があり各部に錆が見られ、片開きのため開閉に重たい感じがあることから、門扉を新たに取り替えたいご相談をいただきました。

取り替える門扉

ご相談では、新たに取り替える門扉のご希望をお伺いしました。

鉄かステンレスかアルミか

既存の門扉は鉄で作られていました。その錆が一つの原因で今回取り替えることになりましたので、できる限り錆びない材料から選ぶことにしました。

錆びない材料としては、ステンレスかアルミが上げられます。また門扉の大きさと開閉方法から、アルミで作るのは困難となって、ステンレスが選ばれました。

風が強い

門扉がある部分は日によって風が強く吹くことをお知らせいただきました。風に煽られる門扉は危険なので、既存の門扉のような、風が通り抜ける格子状の門扉にすることになりました。

手動か電動自動か

門扉を開閉するのに「重い」印象があったので、はじめ門扉を電動にするのはどうかとというご意見もいただきました。よく検討したところ、下記の内容も含めて総合的に考えると手動が相応しいことになりました。

片開きか観音両開きか

既存の門扉が「重い」ので、安易に軽くすることは逆に危険を伴うと予想されました。

そこで既存の門扉自体は幅4メートルの片開きでしたので、重さと風の対策として、扉を半分の幅にして、両開き(両方の端から扉が吊られている形状)にすることにしました。扉自体の各部材は小さくなるので軽くなり、さらに回転半径が小さくなることで開閉に必要な力量が小さくなり、すなわち軽くなり、扱いやすい門扉にしました。

塗装色

門扉が取り付く両側の柵は黒の塗装がされていました。また、別に整備される境内の看板の色も黒色に近い色にする方針もありましたので、新たに作られる看板の色と同調させることにしました。

天然の木材で作られている本堂や山門の存在を尊重するものです。

付け足されたものを集約

門扉の概要が定まったところで、詳細な条件ご希望がありました。

  • 乗り越えない高さにする
  • 賽銭箱を付ける
  • 開閉時間を表示する

新たな門扉のデザインに合わせて、設計することにしました。

カギは簡単に

既存のカギは大型の南京錠で、重く扱いづらいとのことで、小さな南京錠で扱えることにしました。

門扉の詳細設計

上記のご希望を受けて、新しい門扉が設計されました。

門扉のデザイン

両開き(観音開きとも言われる)形になり、扉自体は縦格子上です。風を通し、動作も既存よりか軽くしました。

開閉の仕組み

両側に支柱が立ち、中央で施錠します。扉には太いフランス落とし(上下に動く棒が、地面に固定された穴に差し込まれて、門扉を固定する方法)が取り付けられて、そこに南京錠を差し込める方式にしました。

フランス落としと賽銭箱が取り付き、扉の下部に扉を支える骨を入れたので、L字状に箱状になった部分ができました。

賽銭箱

門扉が閉ざしてあるときに来訪された方が、お賽銭を投げ入れられるので、その受け箱が必要で、小型の賽銭箱を縦格子の間にはまるように、L字の箱の中に収まるように付けました。

基礎コンクリート

基礎コンクリートは、地上の門扉がズレないように地中で金属門扉を支えます。今回の門扉は両側に支柱があり、その支に開き戸が取り付けられています。支柱に掛かる力をこれからずっと永く支えなければなりませんので、地中には大きなコンクリートの塊を重しとなるように埋めなければなりません。

さらに今回の門扉は、両側の開き戸が開閉するので、双方の支柱が倒れたり沈んだりしては、門扉が開かなくなったり閉まらなくなったりします。支柱の下部に埋設する2つの基礎コンクリートをコンクリートの梁で繋げて、2つの基礎コンクリートが沈んだり、ねじれたりしないようにしました。

現地工事

現地境内で新たな門扉を組み立てるにあたり、1日だけでは終わらずに、間隔を空けた4日間に渡り、工事を行なって下さいました。

スケジュール

  • 地中掘削と鉄筋配筋と基礎アンカー設置
  • コンクリート打設
  • 既存門扉解体と支柱設置
  • 門扉設置

の4回に分けられて行われました。

工事期間中の養生と通行不可な時間

基礎コンクリートの鉄筋組み立てられた状態と、コンクリートが打設された時は、地中基礎梁を超えて参拝する方が往来していただく必要があったので、基礎へのフタ養生と、注意喚起の仮設材が用意されました。

基礎コンクリートの鉄筋組立とコンクリート打設

既存の柵の基礎や、埋設水道、崖下の状況を慎重に調べながら、基礎コンクリートを造って下さいました。

  • 土の掘削 に始まり
  • 鉄筋の組立てと設置
  • 支柱固定用アンカーの設置
  • コンクリートの打設
  • 表面の左官仕上げ
  • 門扉固定用金物の設置

が行われて、門扉両側の支柱の据え付けを待ちました。

支柱の据付

門扉の両側の支柱は、永い間 垂直の姿勢を保ちながら門扉の荷重を支えなければなりません。はじめに取り付けられる位置が正確に垂直で、かつ強力に固定されていなければなりません。この門扉にとって一番大事な要となるものです。

そこで支柱の据え付けは慎重に行われました。既に作られている基礎コンクリートに挿入されている鉄筋棒を支柱の底に付けられた板の穴に差し込み、慎重に垂直に立っている状態を作り、保持出来たら鉄筋とボルトを溶接して固定します。基礎に挿入された鉄筋と支柱本体の固定が済むと、固定部分にモルタルが流し込まれて、固定を確実なものにします。

門扉の取付け

両側の支柱が据え付けられると、開閉される扉が吊り込まれます。

扉の開閉と戸締りをする金物が付けられました。

  • 戸当たり
  • 固定フランス落とし
  • 固定貫抜き(閂)棒と南京錠

が取り付けられて、実際に利用できるように設えられました。

完成

全ての作業が終わり、お寺様に使い方をご説明しました。

  • 開き戸が軽くなった
  • 戸締りの金物が使いやすくなった

と、仰って下さいました。

安全にしっかりと戸締りが出来る門扉をご用意出来て良かったです。

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