経営セミナーの全国大会
月に一度、横浜近郊の経営者が 落合英隆先生 の講義をいただく経営セミナーに通っています。落合先生は全国各地で経営者向けのセミナーを開催されていて、今回はその教え子達が一同に集まる全国大会が岡山で開催されました。
60人強の経営者が集まって、2日間に渡り講義がありました。今回も気付きを頂いて帰って来ることができました。
日本は財布を落としても戻ってくる
セミナー解散後、岡山駅から吉備線(桃太郎線)に乗って吉備津神社に向かいました。駅のホームのベンチに座り電車を待ちました。2両編成の列車に乗って岡山駅を出発。すぐにのどかな田園風景が車窓に広がります。
何気に腰のポケットに入れた財布に手をやると、無い(汗。財布がありませんでした。車内は空調エアコンが効いて涼しいのに(大汗。
記憶をたどり、財布を落とした場所を思い定め・・・どうしたものかと思案し・・・とりあえず岡山駅に戻ろうと判断して電車を下車。
すると 岡山地方の電話番号から着信。岡山駅の忘れ物センターからのお電話でした。落とした財布が届いているというご連絡でした。残念な状況から一気に感謝の思いになった瞬間でした。
聞けば電車の乗務員さまが見つけて届けてくださったとのこと。もう感謝の一言。忘れ物センターで、中身もそのままの落とした財布を受け取りました。
日本は財布を落としても戻ってくる国柄です。
吉備津神社
再度岡山駅から電車に乗り吉備津神社に向かいました。吉備津駅で下車。駅周囲は田園地帯で、下車して数分歩くと、神社に通ずる松の並木道が始まりました。
松の並木道は山の麓で終わり、そこに手洗舎があり境内が始まります。階段は初めの部分と中段から上段のふたつに分かれていて、ふたつ目の階段は急勾配で、上がり切ると直ぐに本殿が拝礼できるようになっています。
本殿の建築は、伝統建築の分類では、「吉備津造り(比翼入母屋造)」と言われるもので、入母屋造の屋根を前後に2つ並べた屋根形式です。日本古来の建築技術様式の神社と中国伝来の仏教技術様式の寺院が混在している建築です。
本殿と拝殿の屋根のかたちの推測
では一体何でこんな形になったのか?
建物を設計している立場から、勝手な推測をしてみました。(本来なら歴史的見地に立って、吉備津神社の本殿・拝殿が建設された当時の社会的背景と当時の技術を結びつけるというのが一般的な解説になると思われますが、こちらではこの特異な建築に形創られる経緯を考えてみました)
はじめに本殿の間取りの広さ(下図の濃いグレーの部分)を定め、その手前に拝殿が付きます。これは伊勢神宮の間取り形式と同じです。
次に本殿(下図の濃いグレーの部分)の屋根を考えます。まず平入りになるように(下図の赤線になるように)掛けたのですが、多分これをそのまま造ると屋根として大き過ぎたのではないかと思われます。正方形に近い本殿の間取りに、単に一つの屋根を架けると、巨大な三角形の屋根になります。これでは屋根の頂上=棟を支える柱は長くなり、多分そんな長い木の柱は当時は確保出来なかったのでしょう。そこで、大きくなった屋根の頂部を折って、二つに分けたのではないかと思われます。二つに分ければ屋根の高さは半分になります。
また、ふたつの大屋根を結ぶように、上から見ると、I I が、H になるように、屋根が架けられています。(上図の黒い屋根線が I I 、赤い屋根線が H の中間渡し線)
多分これは、二つの理由が考えられます。
- 一つの大きな屋根を二つに分けると、大きな屋根では間取りの「内々陣」のある中心部分は天井が高かったのに、二つの屋根になると中心部分は天井が低くなってしまうので、「内々陣」のある中心部分は天井を高くしたかった。
- 勾配の付いた屋根の下がった部分と下がった部分が合わさることを「谷になる」と呼びますが、この谷は雨漏りの原因となることが多く、それを少しでも避けるために、敢えてもう一つ屋根を架けることで谷を斜めにして、水平の谷になる部分を減らした。
と考えられます。
さらに二つにになった本殿の屋根の四周に、もう少し屋根庇(下図の赤い屋根線)を伸ばしたため、ふたつの屋根は切妻から入母屋になったのではないかと推察します。
日本古来の建築である神社は、切妻型(四角形の二辺のみに対して勾配が下がる形)です。
これに対し、大陸から移入された仏教による寺院建築(建立された時代から察すると「天竺様(大仏様)」)は、寄棟型(四角形の四辺に対して同じ勾配が下がる形)です。
吉備津神社は神社であるのに、寺院建築の手法が各所に取り入れられています。これをどう見れば良いのか?という疑問も湧きます。
- 白の漆喰の基壇
- 竪格子窓
- 周囲を囲う高欄(手摺)
- 屋根を支える天竺様の木組み
- 寄せ棟屋根
- 跳ね上がる軒庇
これらは全部 寺院建築の造り方技術(建築様式)なのです。
また現地境内に入って驚くのは、
- 境内は山の中腹にあって、広大な敷地を造成している
- 周囲は田んぼが広がる地域であるのに、忽然とこちらだけ高い建築技術が結集している
ことです。
後楽園の流店
吉備津神社の参拝を終えて岡山駅に戻り、後楽園に行きました。
後楽園は、JR岡山駅から車で約5分のところにある日本庭園で、日本三大名園のひとつとされています。江戸時代初期に岡山藩主の池田綱政が岡山城を造営しました。元禄文化を代表する庭園で、国の特別名勝に指定されています。
貴重な伝統建築が沢山ある中、注目したのは、庭園の中にある「流店」という建物です。
色々評価すべき建物がたくさんありますが建築界では流店が注目されています。
それは、城主が庭園の中で休憩を取るための建物で、水の流れの中に建物が建てられているのです。
何の変哲もない建物に見えますが、設計をする身としては、
- 庭園の中に水が流れている
- 水の流れの中に建物を置いた
- 逆に、水の流れを建物の中に入れた
- 柱しかなく開放されている
という実現が困難なものをが、無邪気な発想で、実現しているところに驚かされます。
何に驚いているか具体的に申しますと、
- 水を常に同じ水量を流し続けられることを実現している
- 建物の中に水を引き込ませている発想
- 柱しかない開放空間をして清々しい休憩所を実現している
説明になっているか分かりませんが、中々実現出来ない建物です。
見に行った日も、実際に来園者が板の間で寝転び休んでいました。きっと江戸時代のお殿様もそうして休んだに違いありません。
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