建築基準法 第42条2項道路と敷地の接道の整理
東京都目黒区の旗竿状の敷地を購入し、更地のままにしておられて、接道する前面道路と敷地内通路の整理が出来れば自宅を建てるか、賃貸アパートを建てたいという、大阪にお住いのお客様からご相談をいただきました。
建築基準法 第42条 2項の道路(※)が 周囲の住宅に囲まれた形で敷地に対して路地状(旗竿状)に付いている敷地でした。法 第42条2項道路(※)は、セットバック(狭隘道路協議)は済んでいない状態で、お客様は今 所有の土地が、法 第42条2項の道路になって敷地の一部を道路として拠出しなくてはならないことに多少のご不満がありましたが、まず所有する敷地に建物が建築できるかどうかの条件確認をしなければなりませんでした。
※ 土地に家建物を建てるには、当該市町村役所の建築指導課が建築基準法上の道路として定めた道路に、敷地が2メートル以上接していなければなりません。
そこでまず、管轄役所である目黒区の建築指導課に参って、当該前面道路は狭隘道路=建築基準法上の道路と認められているが、幅員4mが確保出来ていない道路についての扱いを相談しました。
敷地形状の確定
役所の窓口担当課との相談の結果、前面道路である建築基準法 第42条 2項の道路と敷地の接道条件が整理出来て、ご所有の敷地が 建築可能な敷地であることが確認出来ました。
→関連記事「旗竿型路地状42条2項道路と敷地接道整理で賃貸アパート建築可能か確認」
それまでにこちらの敷地を扱われていた不動産会社さんや建築工事会社さんではこの問題が解決出来ずに(何故解決出来ないのかは不明です)、こちらの敷地に建物を建てることが叶わなかったそうです。それで 今回の建主様に敷地を売却された経緯をお知らせいただきました。
敷地測量
すぐに、建築基準法 第42条 2項の道路と敷地の接道形状を確定させるために、遠藤土地家屋調査士さんにお願いして、敷地測量をしていただきました。
正確な敷地測量図があることで、正式な、
- 道路境界線の確定(狭隘(きょうあい)道路協議)
- 建築の設計
- 建築確認申請
が可能になります。逆に敷地測量図がないと、設計と申請は困難です。
→関連記事「建物計画建築設計図作成確認申請に敷地測量図が必要な理由」
狭隘(きょうあい)道路協議=道路境界の確定
目黒区の建築指導課との「狭隘(きょうあい)道路協議」=敷地と道路の境界線を確定させる協議を行いました。
協議は以下の内容です。
- 建物を建築する場合には、敷地は幅員4メートル以上の道路に、2メートル以上接道しなければならない。
- 狭い道路(路地)の奥に建物を建てる場合は、道路に面する敷地の持ち主は、狭い道路の幅を4メートルにするように、敷地を後退させなければならない。
- 4メートルの幅員の道路と、後退した敷地の場所を、官(この場合は目黒区)と民(建主様)の間で確定させる。
という、手続です。
この時点=敷地に建物が建てられると確約できた時点で、正式に建物の設計+監理の業務のご依頼をいただきました。
狭隘道路協議の手続きが完了すると、敷地の形が決定するので、建築設計と確認申請が行えるようになります。
計画の開始・共同住宅型か長屋型か
狭隘道路協議を始めている前から、こちらの敷地に計画する建物の検討は建主様と並行して行なっていました。
賃貸アパートの建物を建てるという方針は決まっておりましたので、「どうしたら最大限広い面積を建てられるか?」という命題を軸に、内容検討が進みました。
元々、2階建てくらいの高さの建物まで計画できる敷地規制があって、建物の型をどちらの種類=共同住宅型?長屋型?どちらで建てるか?の検討がはじめに行われました。
建築基準法の用途
建築基準法上、建物は必ずいずれかの種類=用途に分類され、用途とその建物の規模に応じて、防火性能や避難施設の規制が定められています。
またこれに加えて、東京都内では「東京都建築安全条例」が定められています。(建築基準法に加えて詳細な規定があります)
今回の敷地に賃貸アパートを計画する場合には、建物の用途を「共同住宅」か「長屋」か、どちらかに選択できます。
どちらが効率が良いか比較検討した上で、定めることにされました。
共同住宅とは
1つの玄関の住まいは専用住宅です。
これらが1つの敷地内に複数合わせて建つと「共同住宅」か「長屋」に分類されます。
この住宅を複数重ねた場合、玄関までつなげた通路や階段を設ける建物を「共同住宅」としています。
長屋型とは
住宅を複数重ねても、玄関は全て地上階にあり、2階以上の住戸には地上1階の玄関から専用の内部階段が備わっている建物を「長屋」としています。
共同住宅型か長屋型か
今回の敷地=四方を宅地に囲われて、一辺の長さが15メートルを下回る敷地では、共同住宅を計画すると、玄関や共同通路を設ける奥行き、玄関とは反対側の外部にバルコニーと避難通路を設ける奥行きを確保することが困難になります。
高さ制限や容積率を鑑みますと、長屋型の方が、より賃貸専有面積を広く確保出来ます。
よって今回は「長屋」の型で計画されることになりました。
なお、東京都においては、旗竿状敷地内には共同住宅は計画出来る場合と出来ない場合があります。各市町村によって規定が異なります。
東京都の場合、東京都建築安全条例にて詳細な規定があり、同条例 第10条にて、「特殊建築物は、路地状敷地(旗竿状敷地)に建ててはいけない」と規制されています。ただし、「共同住宅で、階数が3以下かつ延べ面積200m2以下 かつ 住戸数12以下 かつ 路地状部分の長さが20m以下であれば可」とされています。
更に、同条例 第17条で、面積に応じて「主要な出入り口から道路までを1.5m~3m以上確保すること」が必要とされています。
また、同条例 第19条にて面積に応じて「窓先空地が必要となり、敷地内避難通路 又は 道路と接続」する必要があります。
長屋型にするメリット
比較的広くない敷地に賃貸アパートを「長屋」型で計画する場合のメリットは、以下の様な内容があります。
- 避難用外部通路が最小限で良く、建物外周部にも避難通路が50センチ確保できれば良い。
- 2階住戸への階段は各住戸の専用階段になるので、賃貸専有率を上げられる。
- 専有バルコニーが要らない。
- 旗竿地に建築できる。
長屋型のデメリット
- 3階建てが難しくなる。(3階への専用階段の効率が悪い)
となり、四方を宅地で囲まれた敷地の2階建てアパートでは、長屋型の方がメリットが多いと判断できます。
遠距離建主様との設計打合せの方法
今回の建主様は、大阪にお住まいの方です。ご相談当初は建主様ご本人が当方事務所にお見えになり、様々なご相談とお話しをさせていただきました。
その後は、Eメールで図面や資料をお送りしながらのやり取りを重ねました。ただ以下の場面ポイントでは大阪ご自宅に伺い、説明と打合せを行なって内容を確認していただき、次の段階ステップに進みました。
- 基本設計完了時・・・建物の概要と内容仕様の説明確認
- 実施設計完了時・・・工事金額見積り依頼先の確認と確認申請提出図書と工程順序スケジュールの確認
その後は、現地東京にお出ましいただきました。
- 工事契約調印
- 上棟
- 外装内装材料のサンプル確認
工事中は工事者も交えて頻繁にメール連絡を行い、内容、金額、日程スケジュールの確認が行われました。
住戸のタイプと住戸数
アパートの住戸の建て方を「長屋」型にすると決まった後に、1階と2階の各住戸をどのようにするか?=各フロアを2等分にするか?3等分にするか?が検討されました。
(1)1階:2住戸、2階:2住戸・・・計4住戸
(2)1階:3住戸、2階:3住戸・・・計6住戸
(3)1階:2住戸、2階:3住戸・・・計5住戸
(4)1階:3住戸、2階:2住戸・・・計5住戸
- 立地(沿線と駅からの距離)
- 入居者様の想定
- 面積
- 賃料
各タイプのメリットデメリットが話し合われ、結果、(3)1階:2住戸、2階:3住戸・・・計5住戸になりました。
事業収支計画
住戸のタイプと住戸数を検討している際に、賃料と大家さんとしての収入額についても検討されました。建設費の支出と賃料の収入とのバランス、そして満室の割合を鑑みて、(3)1階:2住戸、2階:3住戸・・・計5住戸 に定められました。
木造2階建て
事業収支の検討の中で、費用の面から構造の種別も検討されました。2階建てであることから、木造 鉄骨造 鉄筋コンクリート造が選択できますが、費用の面から木造に絞られました。
ちなみに、こちらの計画が検討されている時点では、構造種別の坪単価は設備まで含めると、
- 木造・・・75~90万円/坪
- 鉄骨造・・140万円/坪
- RC造 ・・150万円/坪
でありました。(木造は50万円/坪を説明する方が居られますが、そちらは設備を含んでいません)
結果、建物の規模と構造は、木造2階建てとなりました。
間取りプラン
建主様のご希望は、
- 広いリビング(寝室)
- 水廻りはリビングと分ける
- トイレは独立させる
- 風呂(ユニットバス)と洗面と洗濯機置場を分ける
- 収納を設ける
とお伝えいただきました。限られたスペースの中で、プランを検討しました。
広くないアパートの場合は、可能な限り通路の面積を小さくすることです。当初描かれたプランは、練りに練られて、リビングがドンドン広くなっていきました。
1階
3室を確保する1階は、2階への階段部分もあります。部屋は細長い「うなぎの寝床」状になり、玄関~水廻り室~リビング(寝室)という構成になります。
採光確保のための出窓
建築基準法に定められた計算方式で、リビング(寝室)には間接的でも日射が入らなければなりません。その広さに応じて、
- 窓の大きさ
- 窓の位置(1)=隣地境界線からの離隔距離
- 窓の位置(2)=屋根からの深さ
によって、規制以上の採光を確保しなければなりません。
この採光を法的計算で確保することと、実際の室内の環境を向上させるために、部屋の一部を突き出させて出窓状にさせました。
(採光確保とは別に、平成31年4月より東京都条例改正により、隣地境界線より50センチの外壁後退が義務付けられました)
水廻り室の集約とトイレの分離
入居者様の利便を考慮して、水廻り室の間取りプランは練りに練られました。具体的には初めの間取りプランから、少しずつ少しずつ余分な場所を省き、水廻り室を極限まで省スペース化し、リビングを広く確保して行かれました。
2階
外壁面の場所は同じの総2階で、1階は住戸を3つに分けて、2階は2つに分けました。1階玄関と続く内部階段は外壁面沿いに設けられ、一気に2階に上がれる形になっています。
下駄箱の位置と階段床の仕上げ
2階の住戸に上がる階段は、地上にある玄関扉を開けるとすぐに始まります。地上階の玄関あたりに寸法的な余裕があれば、そこに下駄箱を設けて靴を脱いで上足になる土間を設けますが、下駄箱を設ける寸法的の余裕がなく、下駄箱は階段を上った2階に設けました。靴を脱ぐのは2階となり、階段は靴のまま上がり下がりすることになります。
階段の床の材料は外部でも使用できる耐久性のあるシート材料を貼りました。濡れた靴で踏まれても水に強く傷にも耐久性があるので選ばれました。
北側隣地斜線制限の影響
敷地の用途地域は「第一種低層住居専用地域」で、北側の隣地境界線から北側高度斜線の高さ制限を受けます。
このために建物の2階の1部は多少屋根を削られるような形になりました。
これはそのまま内部の壁と天井に反映されて、高さ斜線規制の角度が内部にも表れています。
引き戸の間仕切り
2階の住戸は、キッチン・ダイニングとリビングを区分けできる広さがありました。居住者様には、区分けして住まう方と、広くワンルームで住まわれたい方もおられると思い、区分けを引き戸で間仕切ることにしました。
引き戸を閉めればキッチンダイニングとリビングで区分けすることができて、引き戸を解放すればワンルームで住戸を広く使用出来ます。
吹き抜けとトップライトと飛び梁
さらに2階は天井を貼らずに屋根裏まで吹き抜けにすることにしました。天井はとても高くなり、梁も頭上をめぐりダイナミックな住戸になっています。
同じ面積でも天井が有る部屋に比べると容積は圧倒的に大きいので、近隣の競争物件との比較では選ばれる物件となるよう特徴を追加しました。
吹抜けのあるリビングダイニングの照明
天井が屋根の形に沿って吹抜けとなっている2階の住戸の照明は、入居者様の好みによって灯りの方式を選べられるように、梁の上端レベルでライティングレールを壁に沿わせて、移動できる拡散型のスポットライトを備えさせて、
- 器具を屋根に向けて天井を照らし、部屋全体を柔らかい照明で包む
- 器具を床に向けて、明るい手元照明環境にする
などと、選べられるようにしました。
水廻り室の集約とトイレの分離
キッチンは壁付けタイプにして、ダイニングを狭くしないようにしました。
風呂ユニットバス・洗面洗濯脱衣・トイレは北西側に集約して、使い勝手、将来の改修の向上を考慮しました。トイレは他の部屋と分離して、洗面から入るか、ダイニングから入るかを悩み、最後ダイニングから入ることにされました。
水廻りの部屋の集約は、入居者様にとっては使いやすく、工事は配管が最小限になるので費用も抑制でき、将来の器具や配管の更新なども容易にできることにつながります。
外構整備
アパートの建物の外部周りは、
- 雑草などが生えないようにする
- 掃除がしやすいようにする
という主旨で、清潔に維持し易いことが建主様のご希望でした。
敷地内通路と土間コンクリート
前面道路から敷地内に入り、各住戸までの敷地内通路は、その幅全部をコンクリートの床 土間にされました。コンクリート床には穴や隙間が無いので、下部の土に雑草が生えて延びることはありません。表面は多少粗っぽく仕上げて、滑り難くしていただきました。
雨水が溜まらないように水勾配を付け、排水口に雨水が流れるようにしてあります。
隣地境界部分に雑草を生やさない
玄関のある通路部分以外の建物の3方向は、隣地境界から50センチメートル強だけ離して建物は建てられています。隣地境界と建物の間も、雑草が生えないように徹底されて、コンクリート土間にされました。
外周部の雨水処理
屋根に降った雨水は、屋根先端の雨樋に落ちて、さらに竪て樋に集められ地上に落とされます。地上に落とされた雨水は、地面に埋められた排水桝に集められ公共桝に流されます。
それとは別の敷地内通路や隣地境界と建物の間に降った雨水は、土間の端部に隙間を設けておいて、そちらに流れ地中に浸透するようにしてあります。
敷地内通路の照明
夜間の敷地内通路の照明は、
- 外壁の玄関の扉の直近に付ける壁面照明
- 通路の土間に設けた外部照明
を取り付けて、明かりを確保しました。
ポスト郵便受けと宅配ポスト
ハガキや封筒の郵便物受けは、玄関扉に郵便受けを設けました。長屋には内部の共用部分がないのでポストを設けると雨ざらしになるのと、各住戸が敷地内通路に並んでいるので、玄関扉に設けました。(共同住宅型になると、玄関が各階に位置するので、投函する方の作業が多くなるので、ポストを1箇所に集めて設置しています)
昼間は働きに出て留守になりがちな入居者様達に宅配サービスが届けられると、不在のために配送物が持ち帰られてしまい、入居者様が在宅の際に再度配達してもらうための段取りと、再配達の手間を無くするために、宅配物をそのまま投函できる宅配ポストを設けました。入居者様が不在の際、宅配物は持ち帰らずに宅配ポストに入れられます。宅配者さんはポスト扉を開く開放番号を設定し、その番号を不在者票にメモして玄関扉に付いている郵便受けに不在者票を投函します。入居者様は帰宅後、郵便受けにある開放番号の書いてある不在者票を受け取って、宅配ポストを開放して宅配物を受け取ります。
入居者様にとっても、宅配者様にとっても便利な機能です。
宅配ポストは防水型を選んで、敷地内通路の最も奥の位置に設置しました。宅配ポスト自体は大型で、通行の邪魔になってはならないので、最奥の場所に設置しました。
管理会社に依頼するか?
建物が完成し賃貸事業が始まると大家さんになる建て主様は、賃貸管理についてできればご自身で行いたいと考えていました。しかし現在の住まいが大阪であり、賃貸建物と距離があることから、賃貸管理については不動産会社さんに依頼することにされました。
建て主様が管理会社さんを選ぶ際は、
- 地元の方であること
- 個人経営の会社で管理を他人任せにしないこと
- 責任者の方の人柄
などを考慮にされていました。
設計と工事の順序
計画が始まった長屋型賃貸アパートの計画ですが、
敷地測量
↓
設計
↓
確認申請
↓
工事金額見積
↓
工事契約
↓
地鎮祭
↓
工事着工
↓
上棟
↓
入居者募集
↓
完成
↓
入居開始
の順序で進みました。
敷地測量
前述しましたが、建築計画を始める際に必ず必要なのが、敷地の形と面積と住所の情報です。これがありませんと始まりません。
登記上の面積はありましたが、敷地測量図はありませんでしたので、敷地測量を土地家屋調査士さんにお願いして測量図を作成していただきました。
接道寸法の確認
敷地測量をしていただいて、敷地の道路と接する長さを確かめることが出来ました。
建物を建てるには道路に2メートル以上接してなければなりません。(建築基準法 第43条)2メートル以上の接道長さを確認しました。
狭隘道路協議
建物が建つ敷地に接する道路は、その幅員が4メートル以上なければなりません。しかし路地や小道であった道路が敷地に接する道路に後から指定されたために、道路に建物や敷地が道路にはみ出したままである状況があります。
道路に建物や敷地がはみ出したままの敷地で新たに建物を建てる時は、はじめに道路の幅員が4メートルになるまで敷地を縮小しなければなりません。
道路の福音が4メートルになるまで敷地を縮小するときの、道路と敷地の境界線を確定する、役所と建て主の話し合いを「狭隘道路協議」(きょうあいどうろ きょうぎ)が行われました。
協議が完了すると、道路境界線が確定して、敷地の形が定まります。
基本設計と実施設計
建築の設計は、基本設計と実施設計の2段階に分かれます。
はじめの基本設計は、
- 間取りプラン
- 建物の敷地における位置
- 階高さや建物の高さ
- 外装(屋根・外壁)の仕様
- 断熱材や窓サッシの仕様
- 内装(床壁天井)の仕様
- 設備機器の仕様
などを定めます。
続いて実施設計は、基本設計で定められた仕様に基づいて、各部の詳細な設計を行います。
- 建築詳細図の作成
- 構造設計及び構造計算
- 設備詳細設計
- 外構設計
- 建築基準法の確認申請の図書整備
構造設計と構造計算
実施設計では構造設計が行われます。地震や風に耐えられる建物にするために、構造種別と規模に応じた構造計算がなされて、建物の安全性を確認します。
この時に、柱の太さや位置、耐震壁の位置などが、安全性向上のために基本設計の状態から修正されることもあります。
実施設計が完了すると設計図が完成します。この設計図を基に、確認申請が提出され、工事金額見積りが依頼されます。
確認申請
作成された設計図を管轄する市町村の役所建築指導課に「建築確認申請」として提出し審査を受けます。最近では市町村ではなく民間の建築確認検査機関に審査を依頼します。
建物の規模によって定められていますが、審査手数料が必要です。
工事金額見積依頼
工事金額の見積りをお願いするにあたり、まずは見積りをお願いする工務店様を探さなければなりません。今回の建主様は大阪の方でしたので、近辺の工務店様に知り合いがなく、他にもツテが無かったので、北島事務所から紹介してほしいとご依頼をいただきました。
出来る限り近隣で、規模・用途に見合った工務店様であることを軸に選び、5社様をご紹介しました。建主様のご紹介をいただき、各々に設計図をお渡しして工事金額のお見積りをお願いしました。
見積査定
工事金額のお見積りを5社様にお願いして、約2ヶ月経ってお見積書が3社様からいただき揃いました。(工事の繁忙により2社様からはお見積りいただけませんでした)
お見積書の内容を査定します。
- 設計図の内容は全て反映されているか
- 重複している内容はないか
- 設計の内容を理解してくださっている内容か
- 旗竿状況道路になっている状況を理解していただいているか
- 内容に「一式」表示が多くないか
などを、確かめます。
上記の内容に問題が無ければ、あとは金額の差ということになり、建主様に報告し、工務店様を選んでいただくことになりました。
工事契約
工事金額見積りの査定後、建主様に工務店様を選んでいただき、木造2階建てアパート建物の工事について工事請負契約を交わして正式に依頼されました。
工事請負契約書には、
- 建主様と工務店様の住所・氏名
- 工事の名称・住所・用途・構造・規模
- 工事期間
- 工事代金と支払い時期
- 別紙 約款
- 別紙 設計図
- 別紙 工事代金内訳明細書
が記載されています。
地鎮祭
建主様、工務店様、設計監理者が同席する工事契約締結の席の最後に、
- 地鎮祭の日程
- 神主様への依頼
- 各自が準備用意するもの
が決められました。
地鎮祭当日は、建主様ご家族皆様お越しいただき、賑やかにハレの日となり、ここまで進めさせていただいた事への感謝と工事の安全と無事の完成をお祈りしました。
地盤調査
確認申請に構造計算書を添付する建物では、設計中に地盤調査を行って地中の支持地盤面を確かめて、基礎下の地中支持方法まで設計し申請する必要があります。
しかし木造2階建ての建物は、確認申請に構造計算書を提出する義務がなく、基礎下の地中支持方法については工事着工後に地盤調査を行い、工法を定めることが出来ます。
そのために地鎮祭の後、地盤調査が行われました。調査をして頂いたのはエイチ・ジー・サービス様で、方法はスウェーデンサウンディング試験で、結果は地面より6メートル下に建物を支えられる固さの地盤が有ることが分かりました。
基礎下からこの支持地盤までは高さが6メートルを超えたので、杭を打ち込んで建物を支えることになりました。
- 木造建物の基礎の下の支持工法は、支持地盤面の深さによって変わり、分類されています。
- 表層地盤改良・・・地面から1~2メートル深さくらいまで
- 柱状地盤改良・・・地面から2~8メートル深さくらいまで
- 杭・・・・・・・・地面から2~30メートル深さくらいまで
となっています
杭打ち
直径約5センチの鋼管パイプを120本 地中に打ち込みます。(まるで地中は「剣山」のようになります)
この杭にコンクリートの基礎を載せて、建物本体を支えます。
杭工事には「地盤保証」という保険が掛けられていて、地盤が崩れて建物が傾いた場合に、損傷を復旧する費用を補填する保険が掛けられました。
地中障害除去
杭の打設中、杭が地中に刺さって行かない場所がありました。杭を回転させて差し込んでも、跳ね返り掘り進みません。
これは地中に今回の工事とは関係ないコンクリートのかたまりのようなものが埋まっていると判断しました。そうしたとき、
- 地中のかたまりを掘り起こして除去する
- かたまりに穴を開けて杭を通す
- かたまりを避けて杭を打つ
が選択出来ました。
かたまりを掘り起こしたり、かたまりに穴を開けるには、大型の重機が必要です。敷地は狭い道路の末端にあり、運良く重機が手配出来ても、敷地に重機が入ってこれません。
そこでかたまりを避けて杭を打つ方針にして、かたまりが有って打てない杭の替わりにかたまりを跨ぐ様に杭を打ち分ける方針で構造上安全であることを確かめて、杭の打設が再開されました。
地中に埋まっていて、新築する建物の工事に邪魔になるものを「地中障害物」と呼んでいます。設計や工事はこの地中障害物が無い前提で進められますので、工事中に突然この存在に出くわすと、工事が中断してスケジュールの組み直しや、基礎の形状や工法に変更が生じて、工期の遅延につながります。
もし地中に簡単には除去出来ないモノが有ると分かっているときは、設計前でも、工事前でも事前にお知らせをいただくと、スムーズにことが運びます。
コンクリート基礎の配筋検査
地中杭の打設が完了した後、その上に載せるコンクリート基礎の工事が始まりました。
基礎はコンクリートのお盆のような形になります。地表を約50センチ掘り、まずそこにコンクリートの床板を造り、次に木の土台が載る立ち上がり基礎が造られて行きます。
写真は、土の水分が上に上がることを防ぐ防湿シートが敷かれた上に底床板の鉄筋の組み立てが始まったところです。
床板より下に出っ張るところが線状にさらに地中に下がっていますが、これは基礎底床板のズレ留めです。
基礎コンクリート
木造でも鉄骨造でも、地中の基礎は鉄筋コンクリートで造るように建築基準法で定められています。(建築基準法施行令 第38条)
はじめにコンクリートの中に差し込まれる鉄筋が組み立てられて、鉄筋の太さ・形状・間隔などが検査され合格すると、固まっていないコンクリートを流し込んで基礎を型造るための箱=型枠を組み立てて、コンクリートが流し込まれます。
基礎コンクリートの中に組み立てられる鉄筋は、2005年に起きた「構造計算書偽造問題」の後、工事者・監理者とは異なる第三者による立ち合い検査もしくは建築確認検査機関による検査(鉄筋が設計図通りに組み立てられているかの検査)が義務付けられました。
無事に基礎コンクリートが完成し、その上に木の骨組みが建てられる場面になりました。
上棟
コンクリート基礎の上に土台(どだい)と呼ばれる木材が巡らされます。土台と基礎は、あらかじめ基礎に埋め込まれている金属棒を利用して緊結固定されます。
この水平に巡らされた土台に柱が建ち、梁が架けられ、屋根(小屋組)が組まれます。柱・梁・小屋組は、多人数の大工さんが集まって一気に組み立てられます。この作業を「建て方(たてかた)」と呼び、木造建築の前半のメインイベントとなり、建て方が完了した状態を「上棟(じょうとう)」(屋根の下地の小屋組が組み上がり、棟が上がる)と呼んでいます。
こちらの敷地は幅の狭い道路の接道のために、木材を敷地内に運び込むトラックが近づけなくて、人力手運びとなりました。
上棟が済むと、建て主様も2階に上がっていただいてご覧になり、地鎮祭の際に神主様から預かった棟飾りを棟に打って、お祝いしました。
外装材を決める
骨組みが完成した後は、
- 屋根
- 外壁
- 窓サッシ
が直ぐに造られて、雨水が建物内に入らないようになります。
建て方工事の前に、建て主様、工事者様と共に打合せを持ち、外装サンプルを見ながら、外装材が検討され、お選び頂きました。
外装材の色の付いたパターンを作成して、実際の材料サンプルを見ていただいて、ご検討されました。
窓ガラスと防犯フィルム
周囲を隣りの住宅で囲まれた敷地に、隣地境界線から空地を最小限にして、建物を最大限大きくしているので、外壁の窓は限りなく隣家に近い位置になります。周囲住宅の皆様とのトラブルを避けたり、入居者様のカーテンなどの購入負担を少なくする意味でも、外壁窓ガラスは、不透明になるフィルムを貼っています。
特に1階は防犯フィルムを貼って、不法侵入防止にしています。
防音壁、防音床
長屋や共同住宅の住戸と住戸を区切る壁は「界壁(かいへき)」と呼んで、法令上 1階の壁は上階2階の床下まで、2階の壁は屋根裏まで伸ばして隣りと区分けしなければなりません。
今回の建物ではその界壁を、防音仕様にしました。通常の壁自体は約30センチの間隔で立つ柱状下地材に板材を貼り付けて造られます。
防音壁にするために、まず柱状の下地棒を1列でなく2列に増やして、下地棒には片面の壁板のみ貼られるようにします。通常の壁の片面に伝わった音や振動は 下地棒に伝わり 更に反対側の壁板に伝わって 隣りの住戸に音になって伝わります。この片面の壁板に伝わった音や振動を2列にした下地棒で遮断します。更に内部に布団の様な綿状のグラスウール吸音材を充填して音や振動の伝搬を遮ります。
2階の床に施す防音床の構成は、
・構造用合板 t24mm
+ サウンドカット材
+ 強化せっこうボード t12.5
+ サウンドカット材
+ 強化せっこうボード t12.5
+ フローリング t12mm
として、
下階の天井は、
・強化石こうボードt=1 2 .5
+グラスウール t50(24K)
としています。
内装材の工夫
事業収支計画と立地条件を鑑みて決められた、
- 1階 23m2 × 3室
- 2階 35m2 × 2室
は、大家さんとしては少しでも広い部屋の確保を望んでおられました。
床・壁・天井の内装材料の選定にあっては、「出来る限り広く感じて欲しい」と望まれて、
- 床のフローリング
- 壁・天井のビニールクロス
- 扉建具
を、明るく広く見えるように選ばれました。
設備工事
水廻り設備や照明コンセントなどの電気設備については、順次打合せを重ねて定められ設置されました。可能な限り不必要なモノを取り除き、将来の器具の取り替えにおいても負担を軽減することにしました。
- 建て主様との各器具の確認(建て主様が直接購入して安価になる場合は建て主様購入)
- コンセントやスイッチ位置の確認
- コンクリート造、木造への事前配管工事
- 実管、実線の設置工事
- 器具の設置工事
好きな様に変えられる照明器具
主な部屋の照明は、壁面上部にライティングレールを巡らして、入居者様の好みで、場所を変えたり、器具を変えたり出来るようにしました。
- 器具を移動させて光源の位置を変えて眩しくない部屋に出来ます
- 数を増やしたり減らしたりして明るさを調整出来ます
- 自分好みの器具を選んで室内の雰囲気を変えられます
1K や 1LDK であっても、自分の好みの室内にしていただけるようにしました。
通信設備の比較検討
大家さんになる建主様は今回、入居者様へのサービスの1つである通信設備について比較検討を行なって設置・導入を定められました。
入居者様への無料サービス=wifi
入居者様へのサービスについて検討された大家さんは、通信手段について非常に様々な選択肢があることに驚かれたようです。驚いたというよりも、どれを選んで良いか判断が出来ないと判りました。
そこで、究極的に、
- 無料 wifi を用意する
- 入居者様ごとの要望に対応できる(配線引き込みが出来る)配管他を用意する
ことにされました。
無料 wifi の用意
大家さんの整備費用が高額でなく、かつどなたでも利用できると便利で喜んでいただけるサービスとして、wifi が利用出来ることは最低限必要と判断されました。
入居者様の選択の自由度を高める配管
メールやインターネットの接続で良ければ wifi への接続で足りる場合が多いと想定しましたが、お客様によっては、
- 地上デジタル放送
- BS/CS放送
- ケーブルチャンネル放送
- 大容量通信
- 他
など、必要な放送通信は多岐に、渡ります。
全ての もしくは その一部の整備をしても入居者様が利用してくださるかは不明です。
そこで、放送通信引き込みは入居者様各々に契約をお願いして、引き込み接続が容易な様に、外部通信ケーブル接続箱とそれ以降の内部配管を事前に設置しておくことにされました。
外構工事
建物本体の外壁足場が取り払われると、外構外周りの工事が始まりました。
はじめに周囲に埋設される配管が設置されて、表面の舗装が施工されました。
地中埋設の水道引き込み管下水排水管の交換
今回の建設では、建物に供給される水道とガス、建物から出される排水の管について前面道路に埋設されている設備管全部を取り替える必要がありました。
外構工事整備のタイミングで進められましたが、表層の舗装を撤去して埋設管を取り替えて、舗装を復旧する工事は、敷地に出入りする唯一の場所であり、かつ工事者皆さんの車の止め場所なため、中々出来上がらず完成までに時間が予想以上に掛かりました。
外部照明
夜間の玄関前の通路の照明は、
- 外壁面の各住戸玄関のインターフォンの上にブラケット照明
- 通路側端部に行燈型照明
を設けました。
照らす というより 明かりが灯るようにして、暖かみを演出しました。
行燈型照明は、手前の前面道路際の植え込みにも設けて、行燈が長く奥まで続くようにさせました。
植栽
植栽を好む大家さんは、ご夫妻でご自身で植木を購入して植えられました。
前面道路脇の植え込みと、敷地内通路の最奥に1本オリーブの木を植えて、無気質になりがちな賃貸アパートが少しでも潤いのある環境になるように考慮されました。
完成引渡し
外構工事を行なっている際に確認検査機関の工事完了検査を受けて合格し、「工事完了検査済書」を受領できました。
建主様や監理者の検査による指摘事項についても修正され、外構工事が終わった時点で、建主様にお引き渡しができました。
工事者様から建主様、管理会社様に設備の使用方法、玄関鍵の管理方法などをご説明されました。
登記
計画のはじめに敷地の測量をしてくださった遠藤土地家屋調査士さんに登記をお願いされました。
入居募集
入居者様の募集は、建物完成が見えた頃から、管理会社様が始められました。
工事完成検査で合格後、内見が始められ、複数のお客様がお見えになっていました。
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