ご相談のきっかけ
新宿パークタワーで開催されていた「建築家31会」の展示相談会にお客様ご夫妻が来場され、「マンションリフォームの設計でも相談できるか?」というお問合せから、ご相談が始まりました。
今までの不満
ご夫妻のお話をお聞かせいただくと、今回のご相談の内容に入る前に、これまで経験したご自宅を造る際の工事会社や関わる方達への不信感がありました。
- 何も相談もしないで出来上がってしまったこと
- 何も変更していないのに増えた工事代金を請求されたこと
私たちは設計事務所なので、設計事務所の役割をお話ししながら、マンションリフォームにおける設計者の役割をご説明しました。
認識が変わった設計事務所の役割
設計事務所の役割をお話しして、お客様ご夫妻の認識に無かった内容は、
- 設計事務所は、素材や形についてお客様が選択できるモノを全て提案する
- 設計者の好みをゴリ押ししない(内容を決めるのはお客様)
- お見積り金額が高いか安いかを相場と照合する
- 工事の内容が設計図と異ならないか確かめる
- 工事の変更があった場合の金額を確かめる
などなどで、お客様は設計事務所はデザイン設計をするだけだと思って居られたようです。設計事務所は、お客様が内容が分からないことを分かるまで説明して、工事の内容はお客様が好みや費用によって決める手助けをすることに理解を示してくださいました。ご夫妻は、もしそのことを知っていれば、これまでに沢山してしまった間違いは無かったと嘆いておられました。
工事が小規模だったり、今ある材料や機材の取り替えであれば、新たな設計をする必要がないので設計者は不要です。ただ工事金額の査定や工事内容の品質確認が必要な場合はお目付役として役立ちます。
→関連記事「設計施工一括と、設計と施工の分離、どちらが良いの?」
使い勝手が変わって来たマンション
ご購入後、年齢を重ねて住まわれていたマンションは全く汚れてはいませんでした。しかし年月とともに、ご家族皆様の生活習慣や使い勝手が変わり、使いづらい部分も出来たり、巣立ったご家族もおられ、部屋の構成も変わったため、どうしても模様替えの必要が出来たご様子でした。
終の住処のマンションリフォーム
現役世代のご夫妻ですが、こちらのマンションは「終の住処」になることを前提とされて以前に購入されたマンションでした。様々な住まいに移り住み、便利さと不都合を良く存知上げられたご希望があり、便利さを追求してご希望を叶えることが求められました。
各室のリフォーム
今回のマンションリフォームは、4LDKのマンション全室の全部もしくは一部を改修するご希望でした。
窓の断熱
全ての窓のサッシガラスは1枚ガラスのサッシのため、温度差がある日はガラス面に結露ができるマンションでした。そこで、既存の窓ガラスはそのままで、内側からもう一枚断熱サッシを追加して、結露しないように断熱性と防音性を上げることにされました。
収納の集約
4LDKのマンションで、既に玄関付近の1室は物置きとして利用されていました。物置きとして利用はしていても、それまで利用してきた箪笥や家具を並べて使っている状況で、ご夫妻は収納の効率が悪く、使い勝手も不便であると思っていました。
そこで、部屋が面している通路側の壁を取り払い、通路側面からも収納として利用できるようにすることで、収納力を高めることにされました。(通路側の壁は構造壁ではなかったので除去出来ました)通路側面には箪笥の引き出しが並びますが、利用しないときは引戸のフスマで全面を隠してしまい、通常の通路の壁のように見せることにされました。
→関連記事「マンションリフォーム収納ウォークインクローゼットの賢い利用方法」
キッチンの模様替え
当初のキッチンは購入された際のキッチンが取り付けられていました。奥様の好みの色と、使いやすい引き出しやレイアウトのキッチンを選び、取り替えることにされました。
食洗機、ディスポーザー、背面壁面パネルなど、清潔さを保つ機器や材料が詰め込まれています。
洗面所の器具取替え
限られたスペースの中で、より便利で収納などが沢山ある機器を選んでレイアウトされました。寸法の調整に壁面の厚みや引戸の取り付けが工夫されました。
風呂ユニットバスの取替え
様々なショウルームにお出掛けになり、ご夫妻の好みや機能に合ったユニットバスを定められました。
お風呂の物音が隣りの部屋に伝わりにくくするために、壁面を防音の仕様にされました。
→関連記事「マンションリフォームで風呂ユニットバスの壁面を防音遮音仕様にする」
トイレの便器を選び直す
大便器の座面の高さを低くされたいご希望があり、ショウルームを訪れて実際に機器に座り、ご自身で確かめて器具を選定されました。
ダイニングテーブルに合わせたインテリア
ご夫妻は家具屋さんで非常に気に入られたダイニングテーブルを購入されました。この家具に合わせてダイニングの雰囲気を合わせることになりました。
床は既存のままとする方針なので、壁面と天井、照明を取り替える方針です。
個室の収納
これまで生活をしたきた中で、少しずつ買い足されて多量になった書籍があり、その収納場所に悩んでおられました。収納する本のサイズは小さく、収納自体は大きかったので、余分なスペースがあり、収納するもののサイズに合わせて収納を変えることで、余分なスペースを無くすことにしました。
エコカラット
ご家族にはアレルギー体質の方がおられ、できる限りの空気の浄化が出来ればとお考えでした。そこで、リクシル社の製品素材である「エコカラット」をお好みになり、各室に施すことにされました。
→関連記事「エコカラットモザイクタイルの吸収効果と壁面に貼るアクセントデザイン」
設計図を基に工事金額のお見積り依頼
ご夫妻のご要望をお聞きして、マンションリフォームの設計図をまとめました。
ご夫妻は相応しい工務店様に全くツテが無かったので、北島にご依頼をいただき、相応しい工務店様を紹介して欲しいご希望をいただきました。
これまでの経験に基づいて、
- ご夫妻に相応しい品格
- 規模に合わせた会社規模
- 工事に対する真摯な態度
を加味して、複数の工務店様を推薦させていただきました。
ご紹介をさせていただいた工務店様についてご承諾をいただいた後に、設計図に基づいて、各工務店様に現地を見ていただきながら工事内容を説明して工事金額のお見積り依頼をしました。
部屋別のお見積り
設計図に基づいた工事金額のお見積りは、通常、工事の種類ごとに分けられています。
例えば、壁紙仕上げでしたら、その総面積が計算されていて、部屋毎の面積は書かれていません。
お見積り金額に対して、お客様の予算が高ければ問題ありませんが、お客様の予算がお見積り金額を下回る場合は、工事の範囲を縮小したり、内容を変更してお見積り金額をお客様の予算より安くしなければなりません。
そこで、リフォームの工事金額のお見積もりは、部屋ごとの部材部位別のお見積りに細分化してもらいました。
すると、お見積り金額に対して、お客様の予算が低い場合は、お客様が「今回は工事を見送る部分を選びお見積り金額を下げる」ことができます。
将来予算が確保できれば、工事をすれば良いので、
- お客様も予算に収まる工事が選べる
- 工務店様も値切りがない
ことによって、双方満足のいく工事契約ができるのではないかと考えています。
工事金額の査定と比較
工務店様から提出されたお見積りは、
- 設計図の内容が全て見積もられているか
- 内容に重複や勘違いがないか
- 工事金額の単価に間違いはないか
を確認し、見積りを金額で比較できるようにします。
この際、工事内容の記載に「一式」と書いてある項目が多い場合は要注意で、
- 設計内容に詳しくない
- 工事ができない
を示していると捉えられます。工事会社を選択する時の選択しない指標にします。
内容が確かめられた後に、お客様に金額の比較をお示しして、工務店様を選んでいただいています。
見積金額と予算と工事範囲
一番安い工事金額のお見積りを選んでも、予算に合わない場合があります。
その際は、
- お客様に、設計範囲の中の工事を行う箇所の優先順位を付けていただく
- 工事金額見積りを、優先順位に並べる
- 予算を下回る工事金額の範囲までを工事範囲にする
という方法にすることで、最終的な工事範囲と金額を定めていただきました。
アレルギー反応を実際の材料に触れて確かめる
実際に工事をするときに使用する材料(特に接着剤)を事前に集めてもらいました。
事前に材料に触れていただいて、反応してしまう材料を特定していただきました。
- 現場で使用する接着剤
- メーカー製品
- 家電製品
現場で使用する接着剤
体調を崩してしまう接着剤が一つだけ見つかりました。
→関連記事「マンションリフォームで建材のアレルギーを工事前に直接実体験して判別」
メーカー製品
仕上げ材料にはありませんでした。
家電製品
冷蔵庫や洗面台は体調を崩してしまう何かが含まれていることが分かりました。
対処方法
反応があるモノについては、
- 他の材料を使用する
- 発散枯らし期間を設ける
を、再度試し、体調を崩してしまうかどうかを確かめていただきました。
幸い発散枯らし期間を設けると体調不調がなくなったので、なるべく早い段階で組み立て工事を行い、室内を常に換気して、充分な発散枯らし期間を確保して、アレルギーを起こす原因を抜くようにしてくださいました。
マンション組合にお知らせ
工事を行う期間をマンション組合、管理会社に工務店様を通じてお知らせしてもらいました。組合の理事会に事前に諮り、承認をいただきました。
既存内装の解体
室内の家具を工事を行わない部屋に集めて、養生壁を仮に設けてホコリが掛からないようにされました。
そして解体工事がはじまりました。残して継続利用する材料もあるので、先立って解体除去する部分を綿密に打ち合わせを行いました。
ユニットバス
既存のユニットバスを解体して隠れて見えなかった構造体が現れると、お客様が新たに選んだユニットバスは既存のユニットバスより外形が大きいこともあり、多少の改変をしないと収めきれなくて、工務店様、お客様と相談して、最小の変更で取り付けていただきました。
リフォーム工事で注意が必要な点として、既存内装の仕上げ材の中身の下地や構造体の状況が、設計段階ではどうしても分からないことがあります。そのために工事着手前に検討した内容が実現困難な場合があります。
- 床下や壁内の給水管排水管の配管状況
- 天井内などの排気ダクトルート
これらはお客様がマンションを購入した際に受け取った図面にも記載が無い場合があるので、リフォーム工事を始めてみて、解体工事が始まって分かるものが有ります。あらかじめ設計者から説明はしておくようにはしています。
収納箪笥を隠すフスマ
収納部屋の効率を上げるために通路に面する壁を撤去してフスマにして、フスマを開けると箪笥が現れるようにしました。フスマはお客様が選んだ壁紙を表面に貼ることにされました。壁紙は木蓮の樹が描かれたもので、通路の壁画となるように大きな襖絵となるようにされました。
防音の壁と扉
洗面脱衣室と風呂の音が、隣の部屋に聞こえないような防音性能壁・天井・扉にしました。壁を立てるための下地棒は二重にしてずらして配置してそちらにそれぞれの壁板を貼ります。下地棒の隙間にはグラスウールの吸音材を埋め込み、板は振動しないように重量密度が高い材を貼りました。扉も重い板にして、周囲の枠の当たる部分にはゴムが取り巻くように貼り付けて、振動が伝わらないようにしました。
結果、通常の生活音は伝わらないように出来ました。
→関連記事「マンションリフォームで個室寝室を防音遮音仕上げ室にする」
飾り棚
リビングに面する階段の上部の使用していなかった空間に、調度品や技術品を飾って楽しむ飾り棚を設けました。飾り棚の背面は不透明のアクリル板にして、手前は透明の取り外し式のアクリル板を仕込みました。
エコカラットの効能
タイルのように貼り付けるエコカラットは、建材にアレルギー反応があるご家族にはとても有り難い効能を発揮してくれたそうです。リビングダイニング、各寝室個室、トイレ、キッチンの各壁面に相応しい色彩素材のエコカラットが貼られ、アレルギー原因材の吸着に役立たれていました。
→関連記事「エコカラットモザイクタイルの吸収効果と壁面に貼るアクセントデザイン」
リフォームの完成と設計工事期間
はじめにお客様とお会いしてからリフォーム工事の完成引渡しまで、結局 約2年強掛かりました。お客様が今は他に住まわれていて、急ぐ条件が無く、ゆっくりとした時間の中で設計と工事が行われたためでもあります。
そのためにひとつひとつを確かめてご納得頂いて進めることが出来、ご満足頂けました。
マンションリフォームー設計実績説明
- 家族構成が変わって終の住処にするためのRCマンション改修リフォーム
- 家族構成の変化によるマンションリフォーム設計図
- 模様替え間取り変更のマンション改修リフォーム
- マンションリフォームの工事費用は部屋ごとに見積ると無駄がない
- マンションリフォーム収納ウォークインクローゼットの賢い利用方法
- 玄関リビング階段壁面にニッチ棚飾り棚を設ける
- マンションリフォームで断熱遮熱防音インナーサッシ二重窓
- マンションリフォームでトイレの大便器をショウルームで選ぶ
- マンションリフォームで風呂ユニットバスの壁面を防音遮音仕様にする
- マンションリフォームで個室寝室を防音遮音仕上げ室にする
- マンションリフォームで建材のアレルギーを工事前に直接実体験して判別
- エコカラットモザイクタイルの吸収効果と壁面に貼るアクセントデザイン
- WIC収納部屋の扉と引戸を壁の様に見せる太鼓貼りと引き手金物