土地探しからの賃貸収益物件の計画順序と費用

先日、ホームページをご覧になってお問合せをいただいたお客様で「土地探しからの賃貸収益物件の計画順序と費用」についてのご相談をいただきました。その際お応えしたときの内容をまとめました。

土地探しからの賃貸収益物件の計画順序と費用

土地探し購入から賃貸収益物件経営を始める場合の、「順序+内容+費用」について解説します。内容は「住居系地域で2階建て共同住宅」程度を前提とします。

目次

  1. 賃貸物件計画の方針確認
  2. 土地探し
  3. 建物ヴォリューム計画と事業収支計画
  4. 銀行融資
  5. 土地購入決済
  6. 建築設計
  7. 工事金額見積
  8. 工事契約
  9. 工事
  10. 管理者選定
  11. 入居者募集
  12. 工事完成
  13. 入居開始
  14. メンテナンス
  15. リフォーム
  16. 北島建築設計事務所の実例
  17. 終わりに
  18. その他 抑えておきたい内容
  19. 具体的な方法

1.賃貸物件計画の方針確認

賃貸物件取得を始められるにあたり、はじめにどこにどのような建物を建てるかの方針を定める必要があります。

土地の場所として有効なのは「賃貸物件に入居する人が多い地域」です。それは首都圏ならば、

  • 山手線の内側
  • 山手線の外側で駅から徒歩圏
  • 主要沿線の駅から徒歩10分(最近では徒歩7分)

と、されています。

もちろんこの他にも、沢山の人が利用する施設の周辺(例えば 大学、工場 などです)も考えられます。

特に土地購入からの場合は、建てられる建物は土地の広さや形状に大きく左右されるので、建物の規模=階数や面積についても、おおよその目処を立てると土地探しの焦点も定まって見つけ易くなることにつながります。

よって、土地探しの方針としては、

◯◯線沿線  ◯◯駅〜◯◯駅  駅から徒歩7分以内  ◯◯m2程度」(以下「土地探しの想定内容」と呼びます)という想定となります。ただしご自分で定めた方針も、入居率、家賃相場、土地の値段などが好ましい場合には、多少の幅を広げても構わないのではないでしょうか。

またこの方針は何回か「土地候補+建物のヴォリューム(各住戸の面積)+収支計画」までをシミュレーションしてみないと定まらないかもしれません。

2.土地探し

最近の土地探しの主流は、インターネットの大手不動産会社サイトからの情報収集が主流になっています。上記の「土地探しの想定内容」をサイトの検索欄に入力するだけで新着情報が入手できます。

この作業は地道な作業で、毎日繰り返し行い、ご自分の条件に適った候補地が出て来るまで行います。候補地の情報が上がるのは前触れがあるわけではないので、定時で行うしかありません。ただしこれはお手元の携帯電話(できればスマートフォンやタブレット)で出来るので、どこに居ても出来ることになります。

ご自分が定めた「土地探しの想定内容」に適った候補地が見つかった場合は、直ぐに土地情報(土地の住所や都市計画情報やインフラ設備情報、そして測量図)を出来るだけ多く入手します(不動産会社窓口にメールか電話で申込み)。

そして直ぐに上記情報を設計事務所に送ります。ここからの作業は以下の「(3)物件立案と事業収支計画」になりますが、もし土地として魅力ある土地の場合、土地情報のアップ〜(3)の作業を経て、大家さんが土地購入の申込みをするまでに遅くて3日、出来るなら2日で行わないと優良な土地は直ぐに購入されてしまい、ネットからは情報が消えます。ライバルは見えませんが多いと思って下さい。

上記のようなスピード感で、土地探し〜申込みまでを行わなければならないので、「土地探しの想定内容」と建てたい物件の内容、家賃相場などは、事前に把握しておかなければなりません。すると、繰返しになりますが、「土地候補+建物のヴォリューム(各住戸の面積)+収支計画」までは何度かのシミュレーションが必要になると思います。

なお借地は、後の銀行融資で不利となるので(融資の担保とならないため)、自己資金が充分にある場合を除いて対象としません。

3.建物ヴォリューム計画と事業収支計画

ネットによる土地探しで候補地が見つかったら、直ぐに土地情報を入手して設計事務所に送り、設計事務所は建物ヴォリュームを計画します。

土地情報とは、

  • 住所
  • 面積
  • 前面道路情報(建築基準法の道路かどうか・道路幅員 他)
  • 都市計画情報(用途地域・建ぺい率・容積率・防火地域 他)
  • インフラ設備情報
  • 測量図(土地の形状が判るもので、登記の公図ではありません)

です。設計事務所が収拾できるものもあります。

土地の値段は、単純に 金額/広さ(坪) の、坪当たり単価で値段の高い安いを比べる方法もありますが、そちらに建てられる建物の規模や家賃の額で決まるものと思われます。すなわち、この後の事業収支計画の内容によって、土地の値段の評価が定めると思われます。

上記 土地の情報が揃い次第、設計事務所に情報を渡して、設計事務所は、

  • 建物ヴォリューム計画
  • 事業収支計画

を立案します。事業収支計画は大家さんがまとめて下さっても結構です。

3-1 建物ヴォリューム計画

建物ヴォリューム計画では、「各住戸の面積」と「構造種別」を大家さんと事前確認します。

  • 各住戸の面積・・・入居される方の想定と人気ある住戸の規模の事前調査が必要です。
  • 構造種別・・・建物の規模(階数)によります。
    平屋2階・・・木造
      3階・・・木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造
      4階〜・・鉄骨造・鉄筋コンクリート造 エレベーター

この時は住戸の面積と全体の面積の把握のため、単線の図面になります。各住戸の中身は土地申込みもしくは銀行融資に進んだときに描かれます。

3-2 事業収支計画

事業収支計画は、上記 (3−1) 建物ヴォリューム計画で、建物の規模と住戸の面積と数が判るので、以下の内容をまとめて収支計画を立案します。

  • 土地の値段(支出)
  • 建物の値段(支出)
  • 銀行融資 必要金額と返済計画
  • 家賃収入(収入)・・・大家さんに家賃相場を調べておいていただきたい
  • 入居率の想定
  • 月々の収入想定

が、立案できます。

下の収支計画表を作成しています。

この収支が良好な計画になる場合に、大家さんに土地購入をされるかどうかの判断をしていただき、宜しければ土地購入(融資が通ればの条件付き)の申込みをしていただきます。

出来れば土地情報発見からここまでで2日〜3日です。

4. 銀行融資

土地購入の申込みをしたら、直ぐに以下の資料(他の資料も必要)を銀行に提出して融資を申し込みます。出来れば事前に申し込む窓口担当を見付けておいて、事前に相談しておくと不明が無いので良いと思います。複数の窓口があると金利や条件の比較が出来るので宜しいかと思います。

  • 事業収支計画(土地値段+建設費用+返済計画+家賃収入想定)(各見積)
  • 大家さんの資産に係わる資料(銀行が指定します)

融資の相談は3週間〜1ヶ月前後と思われます。

銀行融資相談は大家さん本人がされることをお進めします。工務店やハウスメーカーが銀行を紹介して融資を斡旋することがありますが、出来れば避けて下さい。

5.土地購入決済

銀行融資が実行される返答が来ると、土地を実際に購入する手続きに入ります。不動産所有者+不動産仲介会社+大家さん+銀行担当者+司法書士 が集まり、決済作業をします。司法書士は土地不動産の登記手続きを行いますが、大家さんのお知り合いでも結構です。お知り合いが居ない場合は銀行が紹介する場合があります。値段に大きな違いはありません。

具体的な方法に定型はありませんが、銀行で行うことが多い様です。印紙代、司法書士費用を求められます。

6.建築設計

銀行融資が確定して、土地購入が決済されると、設計事務所と業務契約して建物設計が始まります。

  • 建物の外観(屋根・外壁・窓サッシ・バルコニー)
  • LDKの広さやデザイン(床 壁 天井 仕上)
  • 各住戸の設備(電気通信・キッチン・ユニットバス・洗面・トイレ)
  • その他の造作(収納・下駄箱)
  • 共同部分の設備(インターフォン・オートロック・ポスト・宅配BOX)
  • 外構部分の造作(駐車場・駐輪場 等)

が、大家さんと相談の上 設計されます。

設計には3〜4ヶ月 が最低でも必要な期間です。

設計期間には、地盤調査、構造設計、確認申請が行われます。土地によってはその他の申請があるため、日時が加算される場合があります。

7.工事金額見積

設計図が作成されると、設計図に基づいて工務店さんに工事金額見積を依頼します。工務店さんの選び方はおおよそ2つの方法があります。

(7−1) 事業収支計画立案の段階から相談相手としていて、その時から予算を把握しておき、その予算の工事金額で工事契約する場合

(7−2) 複数の工務店さんに声を掛けておき、設計図が出来上がってから工事金額を見積もってもらい、一番安い工務店に工事を依頼する方式

いずれの場合も、敷地に近く、安価に造って下さることが前提です。

(7−2) の工事金額見積には最近では2〜3ヶ月必要になる場合が多いです。工事金額の変動が予想される場合(建物の中身を変更したり、工務店の費用が増大すると予想される場合)は、銀行融資の金額に増減が出来るようにしておくと心配がありません。

8.工事契約

工事金額見積が、予算(銀行融資額)と折り合いが付いたら、工務店と工事請負契約を結びます。

工事金額の支払いは、

  • 着手時(工事契約締結直後)
  • 建物上棟時
  • 完成時

に、分かれて支払われることが多いです。支払い条件は銀行窓口様とも相談の上決定されます。

契約時に契約書に貼る印紙の用意を求められます。

工事完成は、出来れば入居者数の多い期間の前に完成することが理想です。入居者数の多い期間は2月〜3月が一番多く、次に5月のゴールデンウィークとされています。

9.工事

工事着手時に地鎮祭を行います。土地の氏神様(地域神社)にお願いするか、工務店さんにご紹介いただきます。

大家さん+設計事務所+工務店(+今後登場する管理会社?)が列席します。

神主さんに初穂料を差し上げます。その他の準備は神主さん、工務店さんが行います。

工事が始まると、建物で使用する材料や設備の具体的な選定をしていただきます。

10.管理者選定

工事着手後、建物管理者を定めます。

  • 大家さんご自身
  • 近隣の不動産会社

です。

管理者は、

  • 入居者場集
  • 家賃徴収
  • 建物清掃管理

を行います。

ご自身で行わない場合は、管理費を払うことになります。

11.入居者募集

工事が着工し、管理者が定まった時点で、入居者募集を開始します。

  • 家賃
  • 敷金、礼金
  • 管理費

を定めます。

12.工事完成

工事が完了すると、設計事務所が検査を行い、同時に役所(建築・消防)の検査を経て合格すると、管理者の検査の後に最後に大家さんの検査をお願いし、合格するとお引き渡しになります。

新しいカギの交換に始まり、各設備の使用方法や不具合があった場合の連絡先、保証の内容や書面を確認します。

お引渡し後、建物登記を土地家屋調査士に依頼して、大家さんの土地と建物になります。

13.入居開始

完成後入居開始です。ここまでで、計画が終わり、あとは収益を生む物件としてのはじまりです。

14.メンテナンス

出来るかぎりメンテナンスが要らない材料を提案して、選んでいただきますが、完成後10年を超えると傷む部分も散見される場合があります。

工務店さんと相談されても構いませんが、なるべく費用を掛けない判断をする設計者に相談してくださった方が良いと思います。

15.リフォーム

入居されている方が退居し、内装が壊れていたり汚れている場合はリフォームが必要です。工務店さん管理者に相談して、費用対効果を確認して、行うべきでしょう。

16.北島建築設計事務所の実例

◆土地探し+自宅併用アパート

立川のロフト付き賃貸アパート併用住宅

自宅併用としているため、住宅ローンが利用できました(金利が安い)

◆土地探し(旗竿地)+木造ロフト付2階建てアパート

杉並の木造ロフト付賃貸アパート

渋谷のロフト木造賃貸アパート

旗竿地のため、土地価格が安く購入できました

◆土地探し+木造3階建てアパート

杉並永福の木造3階建て共同住宅賃貸アパート

旗竿地では法的に困難ですが、広い土地で鉄筋コンクリート造より安価な建設費で建てられました。

◆賃貸事務所ビル

新橋賃貸ビル「MKプレイス」

相続された土地に賃貸オフィスビルを建てられました。

17.終わりに

上記の「土地探しからの賃貸収益物件の計画順序と費用」は、飽くまでも北島がこれまでに経験をさせていただいた計画のなかで、大家さんがスムーズに行って来れて、かつ満室を続けておられる方々の物件で行われた方式をまとめたものです。

他にも方法はあると思いますが、まずは一般的方法として捉えていただければ幸いです。

今回説明させていただいた方法の根底には、真っ当な金額で(安い金額で)賃貸建物を建てるには「登場人物の種類と人数を少なくする」方法が一番です。

上記には、大家さん+不動産仲介者+設計者+銀行窓口担当者+工事工務店+建物管理者(他に司法書士と土地家屋調査士)しか登場しません。費用を抑えるには、関係者を絞り、その経費を最小限にする方法が最適であると考えています。

逆に係わる人々が、ハウスメーカーだったりすると沢山の人数と宣伝対策が取られていて、とてつもない金額が搾取されていたり、もしくは提示金額よりはるかに安価な建物が提供されている現実がそこにはあります。

しかしその現実は高額の工事費などの中に隠れてしまっていて誰もそのことに気付きません。判るのは、完成後 他者と比較してやっと判ります。

18.その他 抑えておきたい内容

「土地探しからの賃貸収益物件計画」では、(イ) 入居者が確実に居る土地で、(ロ) 可能な限り安価な土地で、(ハ) 安価に長持ちする建物を建てることしかありません。

入居者が確実に居る土地は、東京に直接連結している人気の鉄道沿線です。これまでは徒歩10分以内と言われていましたが、最近では徒歩7分とも言われ出しました。

可能な限り安価な土地は、粘り強く候補地が見つけられるのを待ち、発見したら即申し込む体制を取っておくことです。

安価に長持ちする建物を建てることは、土地探しから入居開始まで通じて先導できる一人を選んで進めることです。その一人は理想は大家さんご自身であればなお良いのですが、はじめは誰かに頼むしかありません。それは大家さんの財産を守る立場に居る(手前味噌ですが)設計事務所であると思っています。

19.具体的な方法

そこでどうするか? が、お悩みのはじめになるでしょう。

他の方はどうしているのかも気になると思います。他の皆様にお聞きして、それでも当方の考え方にご納得いただければ、以下の(A)(B)2つのうちから方法を選んでいただいています。

  1. もし大家さんが北島建築設計事務所を必ず設計者としていただけるお約束を結んでいただけるなら、上記(3)の作業は無料でさせていただきます。ただしその場合は、契約書の取り交わしをお願いしています。
  2. 上記(3)の作業を、1件1回につき5〜15万円で作成します。金額の差は、物件の規模に依ります。この場合は、都度のご依頼になりますので、設計者としてのお約束は不要です。ただし(3)の作業でいただいた金額は、設計者として選んでいただいた時の業務金から差し引きます。

以上、長くなりましたが「土地探しからの賃貸収益物件の計画順序と費用」とさせていただきます。ご不明な点ありましたら、お時間をいただきご説明致しますので、何なりとお申し付け下さい。宜しくお願い申し上げます。

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北島建築設計事務所の実績解説をご覧いただき、誠にありがとうございます。北島俊嗣の30年を越える設計業務経験に基づいた設計実績解説は、お客様の家づくりや建物のお悩みの解決にお役に立てたでしょうか。


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ご相談の初回は無料です。ご相談をいただいても直ぐに費用は発生しません。ただし 計画ヴォリュームプランや詳細な間取りプランを作成したり、事業収支計画を立案する場合は費用を頂きます。ご相談には責任あるお応えをさせていただきます。


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